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滋賀県東近江市・五個荘地区――。 江戸時代後期から明治にかけて、呉服・太物・麻布など繊維を中心とした商いを展開し、全国へ羽ばたいた近江商人たちの故郷であり、今なお白壁や舟板塀、水路といった歴史的景観が色濃く残る町だ。重要伝統的建造物群保存地区や日本遺産にも指定されるこの地は、「近江商人発祥の地の1つ」として広く知られている。 しかし、弊社の視点はここにとどまらない。私たちは五個荘を、単なるノスタルジックな観光地ではなく、近江商人の経営哲学を現代の地域づくり、人材育成、そして事業創出へと昇華させようとする最前線と捉えている。この五個荘の挑戦を、和装産業が向かうべき「第ニ復興モデル」に重ねたとき、現代の私たちが進むべき道が鮮やかに浮かび上がってくる。 「三方良し」を観光地から「次世代の商い」へ 五個荘の中心にある理念こそ、『売り手よし、買い手よし、世間よし』の「三方良し」である。商売とは売り手だけが潤うものではなく、買い手に喜ばれ、さらに地域や社会にも役立ってこそ長く続くというこの考え方は、現代の企業経営においても普遍的な羅針盤だ。当時の商人たちは、利益を社会に還元する「陰徳善事」や、地域に仕事を生み出す「お助け普請」にも積極的に取り組んだという。 現在の五個荘では、この歴史をただ保存するにとどまらない。3つの近江商人屋敷の公開や、近江商人博物館での多彩な展示・講座、商家に伝わるひな人形や武者人形の展示、街歩きなど、歴史文化を生きた体験として年間を通じて発信している。2026年には、近江商人博物館の開館30周年を記念した企画展「The近江商人︱立身出世物語︱」や「東近江学」が開催され、大きな盛り上がりを見せている。 さらに注目すべきは、歴史を「見せる」で終わらせず、現代のビジネスへと接続させている点だ。近江商人の町家を活用した宿泊・ワーケーション施設が誕生し、「三方良し」を肌で体感しながら地域課題の解決や新規事業創出、人材育成につなげる試みが実を結びつつある。 「歴史の保存」から「思想の実践」へ これからの五個荘に期待されるのは、「近江商人を保存する町」から「近江商人の思想を実践する町」への本格的な進化である。  例えば、若者や企業経営者を対象とした「現代版近江商人塾」の開校、全国の産地との交流、海外の経営者・学生を招いた研修、さらには商家や街並みを舞台にしたビジネスコンテストなどが考えられるだろう。 私たちが直面している人口減少、地域産業の衰退、後継者不足、海外市場への進出といった現代の課題は、近江商人が生きた時代とは異なる。しかし、「信用を積み重ねる」「無駄を省く」「顧客を大切にする」「利益を社会に還元する」という商いの基本姿勢は、いつの時代も変わらない。 五個荘の持つ強力な地域ブランドを、単なる観光資源にとどめず、経営教育や地域産業、海外交流へ拡張していくこと。それこそが、「三方良し」を21世紀の地域経済モデルとして再構築する鍵となる。 和装産業の「第ニ復興モデル」と5つの共通項 この五個荘の歩みは、伝統の継承に苦慮する和装業界にとって極めて示唆に富む。産地や企業が単に古き良き「伝統」を守るのではなく、そこに込められた思想を現代の商いに翻訳し、新しい顧客、新しい市場、そして新しい地域との関係を構築すること。五個荘は、「伝統を守ること」と「新しい商いをつくること」を高い次元で両立させる、和装産業の第ニ復興モデルそのものと言える。 その構造は、[三方良し]⇒[お助け普請・陰徳善事]⇒[現在の観光・教育・ワーケーション]⇒[次世代の商い]という見事な循環を描いている。 五個荘を「近江商人の歴史紹介」ではなく、「次世代の商いを考える実験場」と捉えたとき、私たちが提唱する和装第ニ復興モデルとは以下の5点で完全に共鳴する。 1、過去の成功をそのまま再現しない 近江商人の商法を現代の市場に合わせて再構築するように、和装もかつての巨大な需要・流通構造をただ追うのではなく、現代に合わせた新しい市場をつくる。 2、「三方良し」から「共創」へ 売り手・買い手にとどまらず、地域、職人、若者、行政、観光、異業種までを巻き込む。和装も「産地⇒問屋⇒小売」の枠を超え、IT・ファッション・海外との連携が不可欠となる。 3、歴史・文化を「商品」ではなく「価値」に変える 五個荘が歴史そのものを教育やビジネスに展開するように、和装も「着物をモノとして売る」のではなく、日本文化、歳時記、技術、物語、体験そのものを価値化する。 4、次世代の人材を育てる 近江商人の思想を若い世代に伝え、現代経営に応用する。和装も後継者不足の解消だけでなく、AI、SNS、海外展開、デザイン、観光を担う次世代人材を育成する。 5、地域から外へ出ていく 五個荘の商人が全国市場を開拓したように、和装も「産地にきてもらう」のを待つだけでなく、産地の技術・商品・文化を国内外へ積極的に持ち出す発想が求められる。 対比するならば、こう言えるだろう。 いま求められているのは、「きものをもっと安く売る」という発想からの脱却であり、「なぜこの着物に価値があるのかを伝え、その価値を新しい市場につなげる」という【価値転換】にほかならない。 近江商人が残したのは、古びた商法ではない。時代がいかに変わろうとも、商いを絶やさず世に貢献し続けるための「思想」である。開館30周年の節目を迎えた五個荘の挑戦は、和装産業が真の第ニ復興を実現するためのヒントに満ちている。 9月27日開催「ぶらっと五個荘まちあるき」、保存民家を活用した「ぶらりまちかど美術館・博物館」
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室町問屋の展示会のご案内 11月

10月5日~11月20日 京都丸紅 「九重×中村里砂」正絹振袖新作発表会(京都丸紅3階) 11月2日・4日 一文 春の一品会(社内) 岩田 霜月の会(明星軒ビル4階) 衿秀 冬物本番市(社内会場) 太田和 峰の松 結城紬展 (小華舎 社内奥) 加藤萬 2026感謝市(京都店) 北織 光雅会(社内) 松寿苑 工芸作品展(社内) 千切屋 第140回羽衣選裳会(社内)     錦華帯地展(社内)     第43回小倉淳史傘寿記念展(社内) ツカモト市田 ツカモト市田株式会社 設立10周年記念展「継往開来」(京都文化博物館6階) 11月2日・4日 野口 霜月展(花洛庵) 廣田紬 月初展(社内) 増盛 春物逸品展(京の町屋 廣田家) 11月2日〜4日 ウライ ベストコレクションフェア(京都産業会館ホール2階) 11月2日・4日・5日 一ノ橋 春の逸品百趣会(VIEW  一ノ橋) 近江屋 改輝展(社内) 木村 創作逸品展(社内) 上坂元七商店 霜月の会(社内) 大松 大商談会(社内) 千切屋治兵衞 春の千秀展(社内) 塚喜商事 招喜展(ツカキスクエア4階) トキワ商事 霜月展(社内) 11月2日・4日・5日 豆田商事 紅葉展(社内) 室町の加納 結城紬展(社内) 和光 情熱和光祭(京都本社) 11月2日・4日~6日 井登美 和の文化祭(社内) 京都和装 2026創作展(社内) 11月2日~11日 なべしま なべしま霜月展(なべしま室町支店 丸池藤井ビル)    上記日程と土日祝除く平日全て    なべしま常設展(なべしま室町支店) 11月4日・5日 市原亀之助商店 丹波布(京都店) 川勝商事 春の美勝会 併催・染帯展(社内展示会場) 京商 創風(社内) 11月4日・5日 京都小泉 ウロコ祭り(社内) 啓明商事 啓美苑(社内特設会場) 細尾 中村宗哲さま監修「雪間乃草」展 −茶の湯の美意識を帯ときものに写して−(本社) 吉忠きもの事業部 春の茂松園(社内) 渡敬 三ツ杵展(社内) 11月4日〜6日 外市 大黒まつり(社内) 外与 決算市(社内) やまと 大提案会(社内) 11月16日〜18日 外市 決算売りつくし市(社内)

スタジアムの成功法則に学ぶ 「きものサローネ」を核とした年間プラットフォームへの転換

スタジアムと和装産業は一見すると異なる業種だが、共通する本質的な課題を抱えている。それは、「立派な施設や商品をつくるだけでは、持続的な集客や収益につながらない」という点だ。地域・企業・消費者が継続的に関わり、新しい価値と事業を生み出す仕組みがなければ、産業としての持続可能性は担保されない。今回は、東京で開催された「きものサローネ」を題材に、和装業界が取るべき次の一手を考察する。  経済産業省が推進するスタジアム・アリーナ改革では、施設を単なるハコモノではなく、まちづくりや地域活性化の核とする考え方が示されている。この成功法則を和装産業に当てはめると、次の4つの転換が必要不可欠となる。 ◯集客の転換:「試合の日の入場者数」や「一過性のイベント来場者数」だけで成果を測るのではなく、観客・来場者を継続的な顧客へと育てる。 ◯連携の共創:単一の企業にとどまらず、チームや企業間の共創(産地・メーカー・小売・海外)を促す。 ◯収益の多角化:入場料や単発の販売にとどまらず、年間を通じた事業や体験価値を育てる。 ◯地域・世界への発信:地域産業が持つ本来の価値を高く、かつ持続的に発信する。 和装イベントにおいても、来場者数という数字の表層だけに惑わされてはならない。商談、受注、新規着用者の増加、産地への経済波及効果、さらには海外販路の開拓までを総合的な成果として定義し直すべきである。  きものサローネが担うべき「次の役割」 「きものサローネ」はすでに、産地から小売までを結ぶ国内最大級の場として大きな成果を上げてきた。次の段階では、その成果を個々の出展者・企業の単発の売上に終わらせず、和装産業全体の復興を牽引する仕組みへと昇華させる必要がある。 ◯展示会から年間事業へ:10月のイベントを「起点」と位置づけ、年間を通じた商談、商品開発、販売、着用者との交流を継続する。 ◯産地の共創と市場開拓:一社単独では参入が難しい海外展示会、異業種との商品開発、観光・体験事業を、複数の産地や企業で共同展開する。 ◯来場者をファン・顧客へ:会場での即売にとどまらず、着付け教室、試着体験、オンライン販売、そして地域の専門店への来店へとシームレスにつなげる。 ◯成果を可視化し、投資を呼び込む:来場者数だけでなく、商談成立額、継続取引数、海外販路の広がり、若手職人の雇用などを定量的に記録し、行政や民間企業が参入・投資しやすい仕組みを整える。  「施設」より「運営の仕組み」に学ぶ 和装産業の復興において重要なのは、新しい巨大なハコモノをつくることではない。奈良の中川政七商店が産地やメーカーを束ね、合同展を成長させてきた手法に重なるように、既存のイベント、産地の工房、専門店、商社、自治体、文化施設などを有機的に結びつけ、分散している資源を一つの大きな事業として運営する「仕組み」こそが求められる。 和装業界でも、産地横断型のプラットフォームを単なる「売り場」から「新しい事業を生み出す場」へと大胆に転換する余地が十分にある。 和装産業が持続的な成長を遂げるため、きものサローネを中核とした「第二復興プラットフォーム」の全体像と具体的なアクションは以下の通りである。 ◯商品開発:複数産地による共同商品開発、和洋融合のデザイン、希少染織のブランド化 ◯販売・販路:全国の専門店、ECモール、海外バイヤーへの継続的な商談会の実施 ◯体験・顧客育成:産地工房、着付け、観光、文化体験をパッケージ化した顧客育成プログラム ◯海外展開:欧州・アジアでの展示会出展、海外デザイナーとの協業、越境ECの強化 ◯人材育成:仕立て、染織技術、販売、海外営業を担う若手人材の育成・確保 ◯資金・基盤:企業スポンサーシップ、行政支援策、金融機関を巻き込んだ共同事業投資 和装産業・第二復興プラットフォームの構造 ●きものサローネ(東京での発表・商談・交流・情報発信) ◎産地・メーカー:共同開発・新商品・技術継承 ◎小売・卸:顧客育成・販売・商談継続 ◎海外・異業種:海外販路・ファッション・観光 ◎行政・金融・文化:資金・制度・地域連携 ◎年間の事業成果:新しい顧客・受注・輸出・雇用・次の投資 東京で開催された「きものサローネ」は、産地から小売りまでをつなぐプラットフォームとして、和装業界に新しい交流と商談の活気をもたらした。今後は、この成果を一過性のイベントに終わらせず、年間を通じて商品開発、販売、海外展開、人材育成を生み出す産業基盤として発展させなければならない。 スタジアムの成功が、単なる施設の規模ではなく、集客、地域連携、収益事業、継続的な運営にかかっているのと同様に、和装産業もまたイベントの来場者数という物差しから脱却し、商談、受注、顧客育成、産地への波及効果を成果として捉える必要がある。 産地・メーカー・卸・小売・行政・金融・異業種が手を取り合い、きものサローネを核とした年間プラットフォームを構築する。そこで生まれた新しい商品や市場の知見を、全国の産地や専門店へと循環させていく。これは、従来の需要縮小を前提とした縮小均衡の延命策ではなく、不毛な価格競争から「価値転換」へと前進するための、和装産業における確かな「第二復興モデル」となるはずだ。

徳島の大逆転物語に学ぶ「桑・シルク新産業」の可能性 これからの地域資源ビジネス

9月26日に放送されたNHK『新プロジェクトX』のテーマ「葉っぱを売って3億円 驚きビジネスで夢をかなえた農家の女性たち 大逆転の感動物語」は、大きな反響を呼んだ。この感動的な事例をヒントに、現在危機的状況にある国産繭の現状と照らし合わせ、今後の「桑・シルクビジネス」が目指すべき方向を探ってみたい。 「葉っぱビジネス」の本質は、葉っぱそのものが特別だったわけではない。「地域に普通にあるものを、用途を変え、売り方を変え、参加する人を増やして産業にした」という点にある。 徳島県上勝町の「いろどり」は、現在年間約2億6000万円の売上を誇り、300種類以上の葉や花などを多品種少量で年間出荷している。ICTを活用して市場・受注情報を農家に届ける仕組みも大きな勝因となった。 この発想を養蚕に置き換えれば、単なる「第二の養蚕産業」ではなく、「桑・蚕・繭・シルクを扱う地域資源産業全体」として捉え直すことで、極めてユニークな活路が見えてくる。  養蚕・桑ビジネスにおける「7つの転換」 ①「繭を売る」から「繭を丸ごと使う」へ 従来の養蚕は「桑→蚕→繭→生糸→着物」という一本道の産業であった。これを複線化する。 桑:桑茶、食品、化粧品、飼料、機能性素材 蚕:シルク、バイオ素材、研究用、教育、観光 繭:生糸、シルクパウダー、化粧品、医療素材、新素材 蛹・副産物:飼料、食品など  京都府が現在進めている、シルクを工業・農業・美容・医療用品などへ展開する研究とも軌を一にする方向性である。 ②特に面白い「桑の葉ビジネス」の可能性 今回の葉っぱビジネスと最も重なるのが桑の展開だ。桑は養蚕のためだけに植えるのではない。桑茶、桑葉粉末、青汁、菓子、飼料、化粧品原料、機能性素材などへ多角化する。 佐賀県太良町では、桑葉から桑茶、青汁、せんべい、飴などの商品化が進行中である。「桑畑=養蚕農家のための畑」から「桑そのものを売る農業」への転換が極めて重要となる。 ③全国に「小さな養蚕ビジネス」を100カ所作る 弊社が提唱する「第二復興モデル」とも合致する。全国に巨大な養蚕工場を作る必要はない。むしろ「1地域100万円、500万円、1000万円の養蚕関連ビジネスをたくさん作る」という発想である。 A地域:桑茶+桑菓子 +観光 B地域:希少シルク+ 工芸+着物 C地域:桑葉+健康食品 D地域:繭+化粧品 E地域:養蚕体験+教育 + 観光 F地域:シルク+医療・バイオ素材 G地域:シルク+アート・デザイン というように、地域ごとに「売るもの」を変えれば、大量生産で中国などの海外勢と価格競争に陥る必要がなくなる。 ④「カイコ」そのものが未来産業になる可能性 農研機構では、従来の生糸とは異なる機能性シルク、蛍光シルク、医療・検査用素材、化粧品素材、電子材料などの研究が進められている。「蛍光シルク」は、群馬県の養蚕農家で実用生産が始まった事例もある。衣料だけでなく、アートやインテリアへの利用も想定される。「蚕=昔の産業」ではなく、「蚕=タンパク質を作る小さな生物工場」という見方の転換である。 ⑤「無菌養蚕」とのシナジー 愛媛県のユナイテッドシルクなどでは、スマート養蚕による周年飼育でシルクを繊維だけでなく食品・化粧品へ展開する取り組みが進んでいる。 また熊本県山鹿市の「SILKon VALLEY」は、「桑園→養蚕→シルク→加工→地域雇用→観光・交流」という地域産業化を目指しており、これは「産地横断型プラットフォーム」とも相性が良い。 ⑥「日本100桑園・100シルク産業構想」 一つの巨大産地を復活させるのではなく、全国100地域に小さなシルク産業を作る。各地域が「桑を育てる・蚕を飼う・繭をつくる・加工する・つなぐ(着物・洋装・アート・観光・教育) 、ECで世界へ売る」仕組みを持つ。その上で全国共通の「JAPAN SILK PLATFORM」のような販売・研究・ブランド・輸出機能を置く。この形なら、一地域では小さくても、100地域が集まれば大きな産業フロンティアとなる。 ⑦養蚕業界における「価値転換」のとき 『新プロジェクトX』のキーワード「人は誰でも主役になれる」は、そのまま養蚕に置き換えられる。 高齢者:桑の葉を育てる 女性:商品開発・加工 若者:SNS・EC発信 職人:シルク製品の製造 学生:養蚕体験・研究 企業・大学:化粧品・食品・機能性素材の研究開発  自治体・観光・着物業界:地域づくり・ブランド化・体験ツアー これによって、「養蚕を守る」から「養蚕を素材に地域の人が仕事をつくる」へ発想が変わる。すなわち、これは価格転嫁ではなく「価値転換」の養蚕版と言えないか。日本の養蚕の単なる過去への回帰ではなく、「日本発・シルク新産業の再構築」へ―。 2026年現在、京都府をはじめ各所での用途展開の模索が進む中、今回のポイントは一つの産地を復活させることではなく、全国の小さな養蚕・桑産業をネットワーク化することにある。

ツカキグループ 2026年7月期決算 不動産・財務が大きく伸長、構造改革を完遂し、今期は本業の躍進へ

ツカキ・グループ(塚本喜左衛門代表取締役社長)の2026年7月度連結決算は、売上高が72億2100万円(前期比100・8%)、申告利益が11億2400万円(同118・1%)の増収増益となった。 「前期はコロナ期からの大きな変化の中で、晴れ着のきもの需要が減退、ウエディングの挙式減少、気候変動などで毛皮の退潮に対して、弊社の構造改革を進めた。毛皮倉庫の縮小、㈱タムラの草津倉庫の移転、きもの卸の売場の改造(京都と東京)、婚礼のマリエクラッセ㈱の精算を進めた」としている。 売上構成を見ると、販路別では専門店21・2%、NC・大手20・0%、百貨店・ホテル12・0%、輸出・WEB11・0%、問屋3・0%、不動産リーシング32・8%。商品別では、きもの40・4%、宝石16・4%、毛皮・バッグ6・0%、補正下着3・4%、ウエディング衣裳1・0%、不動産リーシング32・8%。 きもの事業は、29億500万円(同95・0%)。塚喜商事は売上15億100万円(同88・6%)。大手呉服チェーン店への売上は善戦したが、専門店で苦戦、写真スタジオの開拓が進まず売上ダウンとなった。あさぎ事業部は5月に西陣織あさぎ美術館・大阪中之島館を開業。ドバイからの特需が約3000万円あったものの、売上は前年比91・3%。京都和装は売上3億9400万円(同103・6%)。前々期の鈴乃屋の倒産を受け、前期は中堅営業社員を採用。企画力の増強が実り、売上が徐々に向上した。京朋は売上10億700万円(同103・3%)。2本柱の振袖は好調(同106・8%)だったが、一般呉服で苦戦(97・9%)した。また、新しい柱となっている島善事業部(十日町)が伸長(120・2%)し、念願の年商10億円台の大台をクリアした。 宝石事業部は、11億7600万円(同107・3%)。国内卸は店頭売上が苦戦したものの、催事販売における高額品は好調だった。同社主催型の得意先(百貨店と宝石店など)と連携して富裕層を集客したBIG催事がヒット。ツカキ㈱直営の7店舗(百貨店、専門店:ファーサロン 宝石サロン、インバウンド向け店舗など)の売上は順調(102・0%)であった。 海外事業部は香港と国内のコンベンションがそれぞれ年4回あり、堅調に推移(同102・8%)した。 毛皮とハンドバッグ部門は4億2100万円(同102・2%)。百貨店と直営店を中心に販売。在庫回転率の改善が急務である。 タムラの補正下着は、2億4300万円(前年比96・1%)。特許技術を中心とした機能性下着とブライダル用下着の製造販売、ネット販売(自社サイトと楽天市場)が売上の半分(同106・0%)を占める。前々期「すなお着付け教室」での和装ブラの爆発的ヒットによる反動に加え、カタログ販売が苦戦(同86%)した。 不動産リーシング部門は、23億9000万円(同106・6%)。賃貸マンションの稼働率向上に努め、NY事業(3棟)が好調。ホテル事業では昨年12月に四条HIVE(78ベッド)が開業し、12月には祇園HIVEが4館目として開業予定である。また、仙台に「リエス新寺」(41戸、塚喜商事)を購入する一方、「カーサベルデ博多駅南」(塚喜商事)および㈱タムラの草津倉庫を売却。 期中における日経平均株価の高騰(期初4万1069円 → 期末6万4362円)を背景に、財務利益は8億9700万円(同163・9%)と伸長した。 前期は「内なる構造改革」を進めた。「ツカキスクエア京都」内の塚喜商事3階にある「染と織の商品部」および販売部と、4階にある「和装小物とプレタきものの商品部」を4階に統合。販売部と2つの商品部がワンフロアになり、得意先との商談がスムーズになり、社内の連携も向上した。5階にあったツカキ㈱の毛皮倉庫を縮小し、㈱タムラの草津倉庫を5階へ移設。タムラ営業部と一体化することで社内コミュニケーションが大幅に改善された。なお、不要となった㈱タムラの草津倉庫は売却。地下1階の空きテナント区画で「鳥メロ」と「ミライザカ」が12月に営業を開始する。東京日本橋の「浜町京都ビル」内の塚喜商事㈱東京事業部の1、2階の営業部を2階に集約。3階にあったツカキ㈱東京営業部を1階へ移転。これにより、空いた3階スペースには高砂熱学が入居。1階、3階には新テナントが入居予定。不動産の有効活用が進み、各売場や倉庫の圧縮により古在庫処分と在庫適正化も着実に進展している。 構造改革を終え、創業160周年にあたる今期は、本業の躍進、不動産事業の伸長、社員一丸となり、お客様大繁盛のため精魂込めた挑戦(①新しい取り組みに挑戦②ツカキの特徴〈ヒト、モノ、場〉を発揮する③生成AIを最大限に活かす④人材の獲得とさらなる育成)を行う。なお、2027年7月度の目標は、売上高74億円(同102・4%)、申告利益13億円(同115・6%)に設定している。

短信

小千谷織物同業協同組合 京都・東京で新作発表会を開催 小千谷織物同業協同組合(新潟県小千谷市・高橋克明理事長)は、「伝統を未来へ」をテーマに掲げた「小千谷織物新作発表会」を、京都と東京の2会場で開催する。 会期は、京都展が12月8日・9日の両日、京都市中京区三条通室町の山音5階で、東京展が12月10日・11日の両日、東京都中央区日本橋の大松東京店で行われる。 今回は産地を牽引する有力メーカーが出展し、伝統技法を守りつつ現代のニーズに応える多彩な新作を発表する。 ───・─── 第92回 令和8年度 洛趣会展 11月3・4日 池坊ビル 「第92回洛趣会展」が11月3・4日に京都市中京区の池坊ビルで開かれる。 京の有力26店舗が一堂に会し、各社の手がける逸品の数々を披露する恒例の催しで、時間は9時半~4時。来場は招待制。 洛趣会同人とは1928年に発足し、現代まで続く「老舗」が集まったもの。 京友禅、京呉服、西陣織をはじめ、扇、京人形、風呂敷、袱紗、京竹工芸、京料理、京銘菓、漆器など「本物」のすばらしさを堪能することができる。 なお、3日は表千家、4日は裏千家の担当でお茶席も設けられる。 ───・─── 二条城でNAKED秋の夜間限定アート展 現代の光と音で蘇る寛永文化の粋 京都市中京区の世界遺産・二条城にて、2026年10月23日から12月5日までの期間、秋の夜間限定アート展「NAKED meets 二条城2026」(主催:NAKED meets 二条城制作委員会)が開催される。 本年は、後水尾天皇を二条城に迎えた歴史的儀礼「寛永行幸」からちょうど400年の節目を迎える。本展は、この行幸に中宮として立ち会い、のちに東福門院として着物をはじめとする日本の高度な装いや工芸文化を支えた徳川和子をキーパーソンに据えた。公家と武家が深く交わり、茶の湯、華道、染織意匠、庭園芸術など多彩な文化が花開いた「寛永時代」の美意識とデザインを、先端の光と音のアート演出によって現代に紐解く。 本事業は「寛永行幸四百年祭」の関連事業として位置づけられており、来場者は歴史的空間を巡りながら当時の文化を体感できる構成となっている。 唐門のライトアップから二の丸御殿、内堀、清流苑へと巡りながら、寛永時代の言葉・意匠・色彩をプロジェクションマッピングやライトアップで体感できる。 着物業界や伝統文化に携わる関係者にとっても、寛永期に花開いたテキスタイルや意匠の源流を再発見する絶好の機会となりそうだ。

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文化・芸術

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